「スタグフレーション」という言葉がニュースに飛び交っています。景気が悪いのに物価だけ上がる——なぜそれが怖いのか、投資家として何を考えるべきか、整理します。
著者:槙野翔 | 資産運用の情報メディア 最終更新:2026年3月
📌 この記事でわかること
2026年3月、ホルムズ海峡の事実上封鎖を受けて原油価格が急騰し、「スタグフレーション」という言葉がブルームバーグ・日経・NHKなど主要メディアに連日登場しています。「聞いたことはあるけど正確にはわからない」という方のために、わかりやすく整理します。
スタグフレーションとは何か(30秒でわかる定義)
スタグフレーションとは、「景気の停滞(スタグネーション)」と「物価上昇(インフレーション)」が同時に起きる状態のことです。英語の “Stagnation”(停滞)と “Inflation”(インフレ)を合わせた造語です。
| 経済の状態 | 景気 | 物価 | 対処法 |
|---|---|---|---|
| 好景気・インフレ(普通) | ⬆️ 良い | ⬆️ 上昇 | 利上げで物価を抑える |
| 不景気・デフレ(普通) | ⬇️ 悪い | ⬇️ 下落 | 利下げ・財政出動で景気刺激 |
| スタグフレーション(異常) | ⬇️ 悪い | ⬆️ 上昇 | どちらの対処もできない(ジレンマ) |
普通の経済政策は「景気が悪ければ利下げ、物価が上がれば利上げ」というシンプルな構造です。しかしスタグフレーションでは、景気を助けようとすると物価がさらに上がり、物価を抑えようとすると景気がさらに悪化するという「どちらを向いても詰んでいる」状態になります。
なぜスタグフレーションは普通のインフレより怖いのか
好景気のインフレは「皆の収入も上がっているから物価が上がっても大丈夫」という状態です。一方、スタグフレーションは「給料は増えないのに物価だけ上がる」という状態です。
- ガソリン・電気代・食料品が値上がりする(物価上昇)
- でも景気が悪いので給料は上がらず、ボーナスも減る(景気停滞)
- 結果として「実質的な購買力」がどんどん下がる
- 節約しようにも、食費・光熱費など削れない固定費が上がっている
さらに政府・日銀も対処が難しくなります。景気を助けるために「利下げ・財政出動」をすると物価がさらに上昇し、インフレを抑えるために「利上げ」をすると景気がさらに悪化します。経済政策が「どちらを向いても悪化する」という構造的なジレンマに陥ります。
過去の事例——1970年代オイルショックで何が起きたか
スタグフレーションの典型的な事例として、1970年代の2度のオイルショックがあります。今回と構造が非常に似ているため、参考になります。
| 出来事 | 時期 | 原油の動き | 日本経済への影響 |
|---|---|---|---|
| 第1次オイルショック | 1973年 | 約4倍に急騰 | 物価が前年比20%以上上昇、GDP成長率がマイナスに。「狂乱物価」と呼ばれた |
| 第2次オイルショック | 1979年 | 約2倍に急騰 | 欧米ほどの打撃はなかったが景気悪化。ただし省エネ化・産業合理化で比較的早期に回復 |
第1次オイルショック時の日本は原油依存度が現在より高く、省エネ技術も未発達でした。今の日本は当時より省エネが進んでいますが、原油の中東依存度が約94%という構造は変わっていません。また当時と違い、今回は米関税ショックとの複合という点が日本経済にとってより厳しい条件です。
今回の日本でスタグフレーションが起きる仕組み
今回の局面でスタグフレーションが懸念される理由を、段階的に整理します。
| ステップ | 起きること | 影響 |
|---|---|---|
| ① | ホルムズ封鎖→原油供給が滞る | 原油価格が急騰 |
| ② | 原油高+円安が重なる | 日本円での輸入コストがさらに膨らむ |
| ③ | ガソリン・電気・食料品が値上がり | 家計の実質購買力が低下 |
| ④ | 消費が冷え込む | 企業の売上・業績が悪化 |
| ⑤ | 景気が悪化するのに物価だけ高い状態に | =スタグフレーション |
| ⑥ | 日銀が利上げも利下げもしにくくなる | 政策の手詰まり→長期化リスク |
2026年3月4日現在、日本経済がスタグフレーションに「陥った」わけではありません。複数のエコノミストが「リスクが高まっている」と警告している段階です。ホルムズ封鎖が短期で解除されれば、このシナリオは回避される可能性もあります。焦点は「封鎖がいつまで続くか」です。
スタグフレーションは株価にどう影響するか
スタグフレーションは株式市場にとって「最も嫌われる経済環境」のひとつです。なぜかというと、通常の株価上昇の前提が崩れるからです。
| 資産クラス | スタグフレーション下での傾向 | 理由 |
|---|---|---|
| 株式全般 | 🔴 下落圧力 | 企業業績悪化+高金利で株式の魅力が低下 |
| エネルギー・資源株 | 🟢 相対的に強い | 原油・資源価格上昇の恩恵を直接受ける |
| 金(ゴールド) | 🟢 強い(インフレヘッジ) | 実物資産としてインフレに強く、有事にも強い |
| 債券(国債) | 🔴 下落圧力(インフレに弱い) | インフレが進むと固定金利の価値が目減りする |
| 現金(円) | 🔴 実質価値が低下 | 物価上昇で円の実質購買力が下がる |
| 不動産・REIT | 🟡 まちまち | インフレには強いが、景気悪化で空室率上昇リスクも |
資産を守るために個人投資家がとれる選択肢
スタグフレーションに完璧に対応できる投資法はありませんが、リスクを分散するための考え方はあります。
歴史的にスタグフレーション局面で金は強い傾向があります。ポートフォリオの5〜10%程度を金ETFや純金積立に振り向けることで、インフレヘッジと有事ヘッジを同時に得られます。
スタグフレーション下でも、コスト上昇を価格に転嫁できる企業は業績を維持しやすいです。ブランド力が強い消費財・インフラ・生活必需品(ディフェンシブ株)は相対的に強い傾向があります。
スタグフレーションが仮に現実化しても、それが永遠に続くわけではありません。1970年代のオイルショック後も、経済は回復しています。長期積立投資は「嵐の中でも続ける」ことで、回復局面での恩恵を受けられます。
「怖いから全部現金にする」という選択は、スタグフレーション下では最もリスクが高い行動のひとつです。物価が上がり続ける中で円現金を持つことは、実質的に資産価値が目減りし続けることを意味します。
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まとめ
- ✅ スタグフレーション=景気停滞+物価上昇の同時発生。「給料は増えないのに物価だけ上がる」状態
- ✅ 利下げも利上げも「どちらを向いても悪化する」という経済政策のジレンマが生まれる
- ✅ 前例は1970年代のオイルショック。今回はホルムズ封鎖+米関税という複合ショックで構造が似ている
- ✅ 株式全般・債券・円現金には下落圧力。金(ゴールド)・資源株は相対的に強くなりやすい
- ✅ 現時点では「リスクが高まっている」段階。ホルムズ封鎖の長期化の有無が最大の分岐点
- ✅ 対策は金への一部分散・価格転嫁力の強い銘柄への意識・長期積立の継続の3つ
※ 本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品の購入・売却を推奨するものではありません。経済予測は不確実であり、実際の経済動向は記事の内容と異なる場合があります。投資にはリスクが伴い、元本割れの可能性があります。投資判断はご自身の責任において行ってください。


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