「有事に株を売れ」は本当に正しいのか?湾岸戦争からイラン攻撃まで、過去の中東危機と日経平均の動きを実データで検証します。
著者:槙野翔 | 資産運用の情報メディア 最終更新:2026年3月
📌 この記事でわかること
2026年3月1〜2日、米国・イスラエルによるイラン攻撃が報じられると、日経平均は2日間で約3,300円超下落する全面安となりました。「地政学リスク=株安」は直感的に理解できますが、実際には過去の中東有事で株価がどう動いたかを知ることが、今の局面で冷静な判断をするうえで非常に重要です。
本記事では、湾岸戦争から今回のイラン攻撃まで、主要な中東危機と日本株の動きを実データで振り返ります。
過去の中東危機で日経平均はどう動いたか
まず事実を確認します。以下は代表的な中東有事と、その前後の日経平均の動きをまとめたものです。
| 有事・危機 | 時期 | 初動(発生直後) | 3ヶ月後 | 1年後 |
|---|---|---|---|---|
| 湾岸戦争 | 1990〜1991年 | ▲約23%(開戦前後) | +約15%(終戦後に急回復) | +約10% |
| 9.11米同時多発テロ | 2001年9月 | ▲約6%(1週間) | +約10%(1ヶ月で回復) | 横ばい〜やや下(ITバブル崩壊と重なる) |
| イラク戦争 | 2003年3月 | ▲約3%(開戦直後) | +約20%(「戦争終結=不透明感解消」で急騰) | +約30%超 |
| イスラエル・ハマス衝突 | 2023年10月 | ▲約2%(限定的) | +約10%(1〜2ヶ月で回復) | +約30%超(2024年の大幅高) |
| イランへの米・イスラエル攻撃 | 2026年3月(今回) | ▲約3,300円(2日間) | 今後の展開次第(原油・米関税が鍵) | 不明 |
地政学リスクによる株価の下落は、多くの場合「短期的・一時的」にとどまっています。イラク戦争のように「開戦が不透明感の解消」となって急騰したケースさえあります。重要なのは、その有事が「経済の本質的なダメージを引き起こすかどうか」です。
「有事に株を売れ」は本当に正しいのか
「有事に株を売れ」という格言は有名ですが、実際のデータを見ると、これが正解だったケースは限られています。
特にイラク戦争(2003年)のケースは象徴的です。開戦直前まで世界の市場は「これから起きる戦争」への不安で売り込まれていましたが、実際に開戦してから株価は急騰しました。なぜなら、「最悪の事態が現実になった=これ以上の悪材料がない」として不透明感が一気に解消されたからです。
この現象は「悪材料の出尽くし」と呼ばれ、相場では頻繁に起こります。
有事が起きた直後に売ると、多くの場合その後のリバウンドを取り逃します。本当に売るべきタイミングは「有事が起きたとき」ではなく、「その有事が経済に長期的・構造的なダメージを与えると判断したとき」です。
ただし、この格言が有効なのは「戦争が長期化して経済に深刻なダメージを与えるシナリオ」が現実になった場合です。そして今回はまさに、その最悪シナリオのひとつが現実になりつつあります。
今回のイラン攻撃、過去と何が違うか
今回の下落が過去の中東危機と異なる点がいくつかあります。それが「今回はより深刻かもしれない」と市場が判断した理由です。
| 比較項目 | 過去の中東危機 | 今回(2026年3月) |
|---|---|---|
| 当事者 | 地域紛争が中心 | 米国・イスラエル vs イラン(米国が直接関与) |
| 原油への影響リスク | 限定的なケースが多い | ホルムズ海峡が事実上封鎖状態に(3月2日、イラン革命防衛隊が正式発表)。世界の原油輸送の約20%が通過する要衝 |
| 重なる悪材料 | 地政学リスク単独が多い | 米相互関税ショックと同時発生(複合ショック) |
| 海運への影響 | 局所的 | 日本郵船・川崎汽船など国内大手海運が通峡を停止。米欧損保も戦争リスク補償を引き受け中止 |
| 円の動き | 有事=円高(リスク回避)が多かった | 今回は円安が先行(原油高でインフレ懸念) |
特に注目すべきは、「円安+原油高」の同時進行です。日本は原油を輸入に依存しており、円安と原油高が重なると、エネルギーコストが急騰して企業業績を直撃します。この点が今回の下落を「単純な地政学ショック」よりも深刻に見せている要因のひとつです。
地政学リスクで下がった株が戻るまでの平均期間
過去の地政学リスク起因の株価下落が回復するまでの期間をまとめると、以下のパターンがあります。
| ケース | 回復期間の目安 | 条件 |
|---|---|---|
| 純粋な地政学ショック(経済への影響限定的) | 数日〜1ヶ月程度 | テロ・局地的紛争など |
| 地政学+原油高など実体経済への影響あり | 3〜6ヶ月 | 湾岸戦争・原油価格高騰など |
| 地政学+経済・金融ショックの複合 | 1年以上 | リーマンショックとの複合など |
今回は「中東地政学リスク+原油高+米関税ショック」という複合要因に加え、ホルムズ海峡の事実上の封鎖まで現実になりました。これは過去の中東危機と比較しても異例の深刻さです。焦点は「封鎖が起きるかどうか」から「封鎖がいつまで続くか」に移っています。
ホルムズ海峡は過去の中東危機でも「封鎖リスク」が語られてきましたが、実際に事実上の封鎖状態になったのは史上初めての事態です。日本は原油輸入の約94%を中東に依存しており、備蓄は約254日分。封鎖が長期化すれば、エネルギーコストの急騰を通じて日本経済全体に打撃が及びます。スタグフレーション(高インフレ+低成長)のリスクも現実味を帯びてきています。
個人投資家が今すべきことと、してはいけないこと
過去の歴史パターンをふまえると、今の局面での個人投資家の行動指針は以下のようになります。
- 保有銘柄の「原油・エネルギー依存度」を確認する(輸送・製造系は要注意)
- 長期積立投資は止めない。暴落中こそ安値で仕込める期間
- ホルムズ海峡の封鎖解除の動向と原油価格を継続的にチェックする(中国の調停介入の有無が鍵)
- キャッシュに余裕があれば、「底値確認後に分割買い」の準備をしておく
- 「有事だから全部売る」という感情的な全売り
- SNSの「さらに下がる」「○万円台まで行く」という煽り情報に従う
- 一度売った後、高値で「やっぱり買い直す」の繰り返し
- 生活に必要な資金まで使って「底値買い」を狙いに行く
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まとめ
- ✅ 過去の中東危機の多くは「数日〜数ヶ月以内」に株価が回復している
- ✅ 「有事に売る」が正解になるのは、その有事が経済に長期的・構造的なダメージを与えた場合に限る
- ✅ イラク戦争(2003年)のように、開戦が「不透明感の解消」として株高につながったケースもある
- ✅ 今回は「中東地政学+原油高+米関税」の複合ショックのため、単純な短期ショックとは断言できない
- ✅ 今回はホルムズ海峡が事実上封鎖状態という史上初の事態。焦点は「封鎖がいつまで続くか」に移っている
- ✅ 封鎖長期化+米関税の複合シナリオでは「スタグフレーション」のリスクも。中国の調停介入の有無が最大の変数
- ✅ 長期積立投資家は「何もしない」が基本。個別株投資家はキャッシュ比率を確認して様子見
※ 本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品の購入・売却を推奨するものではありません。過去の株価データは将来の動向を保証するものではありません。投資にはリスクが伴い、元本割れの可能性があります。投資判断はご自身の責任において行ってください。


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